寒い季節のキャンプといえば、暖房器具は欠かせない存在です。
近年は特に、冬キャンプで石油ストーブや薪ストーブを活用するスタイルが注目されています。
あくまで自己責任にはなりますが、テント内にストーブをインストールして暖をとるキャンパーも増えてきました。
そこで今回は、テンマクデザインの「サーカスTC」にウィンナーウェルの薪ストーブ「ノマドビューM」をインストール。
実際に使用して感じた幕内での薪ストーブの注意点や、テントを熱から守るための対策方法をご紹介します。
サーカスTCの素材について
本体 | コットン混紡生地(TC) ポリエステル65%、コットン35% |
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ファスナー | プラスチック系素材(取扱説明書等に記載なし) |
サーカスTCの本体素材は、その名の通りコットン混紡生地(TC)です。
TC生地とは、吸水性がなく雨に強いポリエステルと、火に強いコットンを組み合わせた“いいとこ取り”の生地。
火の粉が飛んできても穴が開きにくいという特徴があります。
ただし、薪ストーブの煙突のような高温のものが長時間触れる場合は注意が必要です。
ポリエステルが含まれているぶん、過度な高温には耐性がありません。
また、ファスナーもプラスチック系の素材が使われているため、熱には非常に弱いです。
実際に、サーカスTCに薪ストーブをインストールし、ファスナーを開けた部分から煙突を出して使用したことで、
「ファスナーが溶けた」「生地に穴が空いた」といったトラブルが多く報告されています。
販売元であるワイルドワンの店員によると、そのような使い方が原因で修理を依頼するユーザーも一定数いるとのこと。
そのため、サーカスTCで薪ストーブを使用する際は、ファスナーや生地の溶け・穴あきに十分注意する必要があります。
薪スト利用時にサーカスTCの生地・ファスナーを守る対策
煙突はテントの高い位置から外に出す

薪ストーブの煙突は、非常に高温になります。
特に、ストーブ本体に近い部分ほど温度が高く、離れて高い位置になるほど温度が下がるのが一般的です。
そのため、煙突をテントから外に出す位置は、できるだけテントの高い場所にするのが理想的です。
たとえば、「ノマドビューM」の煙突は、初期セットで6本付属しており、組み立て時の全高は約2m26cm。
一方、サーカスTCの全高は約2m80cmあるため、煙突の最上部がテント頂点よりも低くなってしまいます。
煙突の最上部からは熱気が放出されるため、その位置がテントより低いと、熱が幕体に影響を与えるリスクがあるのです。
このため、煙突を延長してテントより高い位置まで伸ばすのが安全面でもおすすめです。
煙突を出す箇所の生地・ファスナーの保護には「二重煙突」や「煙突プロテクター」を

前述の通り、薪ストーブ使用中の煙突は非常に高温になります。
特に本体に近い部分ほど熱くなりますが、煙突の最上部でも十分に高温となるため注意が必要です。
煙突をテント外に出す箇所では、煙突が生地やファスナーに長時間触れることになりやすく、そのままでは生地の焦げや溶け、ファスナーの破損などのリスクがあります。
こうしたトラブルを防ぐためには、煙突に直接生地やファスナーが触れないよう、専用の対策を行うことが大切です。
主な方法としては、煙突プロテクターや二重煙突を使う方法があります。
煙突プロテクターとは?
煙突プロテクターは、初期セットの煙突にパンチング加工された円筒状の金属板を被せるアイテムです。
このプロテクターは取り付け位置を自由に調整できるため、テント内のレイアウトに合わせて薪ストーブの設置場所を柔軟に決められるのが大きなメリット。
二重煙突とは?
二重煙突は、初期セットの煙突に追加で取り付けて使う構造になっており、煙突の全長を延長できるのがメリットです。
煙突ガードほど柔軟な位置調整はできませんが、テントの生地に触れる部分にしっかりとセットすることで、直接の接触を防げます。
プロテクターと2重煙突どっちがいい?
2重煙突と煙突プロテクターはすれぞれメリットデメリットがあります。
煙突プロテクター | 2重煙突 | |
メリット | 軽い 位置調節がしやすい | 雨が入りにくい 煙突1本分の長さが増える |
デメリット | 雨が入る可能性がある 煙突の長さは増えない | 重たい 熱がこもりやすい |
どっちを選ぶかは使い方次第ですが、どちらもテントを守るためにはしっかり取り入れたいアイテムです。
風で動かないように、ストーブや煙突はしっかり固定しよう

テントの外に露出している煙突は風の影響を大きく受けやすく、特に強風時には注意が必要です。
風にあおられると、薪ストーブ本体が傾いたり倒れたりするリスクがあります。
そのため、薪ストーブの脚はペグダウンしてしっかり固定するのが基本です。
本体を安定させることで、煙突やストーブが倒れてテントに接触するなどの不測の事態を防げます。
煙突についても同様で、ガイロープ(張り綱)を使って地面にペグダウンし、転倒防止対策を行いましょう。
煙突の最上部付近には、3か所に円形の金具が付いており、そこにガイロープを括り付けて地面に固定できます。
特に風が強い日の設営では、煙突の固定を怠ると非常に危険です。
屋外で薪ストーブを使う際は、本体と煙突の両方を確実に固定することを忘れずに!
薪を燃やし過ぎない

薪を燃やし過ぎると、煙突の温度が上昇し、真っ赤に変色します。
こうなると温度が上昇し過ぎですので、万が一テントの生地やその他の道具に触れてしまった場合、それらを傷めてしまいます。
人が触れると間違いなく火傷をしますので、そのような観点からも薪の燃やし過ぎは危険です。

薪の燃焼具合は、煙突に取り付けられているダンパーの開閉で調整できます。
ダンパーとは、煙突本体から突き出たツマミを回すことで開閉できる仕組みになっており、これを操作することで煙の流れや排気量をコントロールします。
- 燃焼が強すぎるときはダンパーを閉じて排気を抑え、燃焼を落ち着かせる
- 燃焼が弱いときはダンパーを開いて空気の流れを良くし、火力を高める
というように、薪ストーブの燃焼バランスを整える大切なパーツです。

ダンパーと同様に、薪ストーブ本体前面に設置された開閉扉で、空気の流れをコントロールできます。
開閉扉を大きく開くと薪ストーブに空気が供給され、薪の燃焼が強まります。
逆に開閉扉を閉じると空気の供給を遮断でき、燃焼を弱めることが可能です。
煙突が赤く変色する程薪を燃焼させると、煙突自体の温度上昇が激しく、テントの生地を傷める原因になります。
ダンパーや開閉扉、薪の量を調節しながら温度をコントロールするのが重要です。
薪ストーブの二重煙突にさらなる対策をする

テントの生地に触れる煙突を二重煙突にすることで、温度を多少下げることはできます。
しかし金属は高温になりやすく、二重煙突だけでは生地やファスナーへのダメージを充分に抑えることができません。
そこで二重煙突に、耐熱バンテージとカーボンフェルトを巻き付けて、二重煙突表面の温度を抑えます。

耐熱バンテージは車やバイクのマフラーに巻き付けて温度上昇を抑え、直接触れた際に火傷を防止するといった役割を持つ商品です。
薪ストーブの煙突に巻いてもその効果があり、煙突に直接触れるテント生地へのダメージ軽減が図れます。

耐熱バンテージは隙間ができないように、煙突に巻き付けます。
巻き付けた耐熱バンテージがほどけないように、その上から針金を巻き付けて固定します。
ただし二重煙突の上部は熱を逃がす構造になっているため、こちらには耐熱バンテージは巻かない方がよいでしょう。

耐熱バンテージを巻いた状態で薪ストーブを着火し、煙突の温度を確認してみました。
二重煙突+耐熱バンテージの組み合わせにより、バンテージの表面に触れられる程度まで温度はしっかりと抑えられていました。
ただし、薪を最大量燃焼させた場合や、長時間の使用時にも安心して使えるように、
この上からさらにカーボンフェルトを巻いて断熱性を高める対策を行います。
カーボンフェルトは、「スパッタシート」とも呼ばれ、焚き火台の下に敷いたり、アルコールストーブの中に搭載されたりするなど、意外とキャンプシーンでの登場機会が多い道具です。
難燃性かつ熱伝導率が低い素材のため、耐熱バンテージの上から巻くことで、さらに高い断熱効果が期待でき、安全性や安心感がぐっと増します。

カーボンフェルトを巻いたあとは、その上からステンレス製のバンドでしっかりと固定します。
このバンドは「ステンレスバンド」や「ホースバンド」などと呼ばれ、ホームセンターやネット通販で簡単に入手可能です。
耐熱性・耐候性・耐食性に優れており、高温の煙突に巻き付ける用途や屋外使用にも最適。
(※針金で固定しても問題ありませんが、より確実に固定したい場合はステンレスバンドがおすすめです。)
なお、耐熱バンテージだけでも手で触れられる程度まで温度上昇を抑えることができましたが、カーボンフェルトを重ねたことで、さらに安心感が増しました。

二重煙突+耐熱バンテージ+カーボンフェルトを巻いた効果で、テントの生地やファスナーを守る対策ができました。
二重煙突で煙突の全長が延長されたこともあり、テントの頂点よりも高い位置で熱の放出がされるのが分かります。
さらにガイロープで煙突をペグダウンしていることで、強風対策もされており、安心して薪ストーブが使えます。

煙突とテント生地が触れている部分を内部から確認しても、二重煙突と耐熱バンテージ・カーボンフェルトが
煙突が生地に直接触れるのを防いでいることが分かります。ここまで対策をすれば、テント生地やファスナーを
傷める心配はなさそうです。
サーカスTC本体の防寒対策もしっかり行って、暖房効果をアップ
テントの5箇所の足元をしっかりペグダウン
テントの足元はしっかりペグダウンをして、隙間ができないようにします。
簡単な方法ですが、これをやるのとやらないのとでは、暖房の効きが全く異なります。
テントの下部に隙間があると外気が侵入し、テント内の温度上昇が妨げられます。
これではせっかくテント内で薪ストーブを燃焼させても、効率よく温度が上がりません。
寒い時期のキャンプは特に、外気の侵入を防ぐためにテントのペグは深く刺すようにしましょう。
テントのスカートも忘れずペグダウンする

テントのスカートもペグダウンをします。サーカスTCの5角形の辺の中間には、それぞれペグダウン用のゴムが付いています。
これをペグダウンすることで、テントのスカートが地面と密着し、風による外気の侵入を防ぎます。
強風時などはこれだけでも十分に風が入ってこなくなります。
雪中キャンプの際には、スカートの上に雪を被せる方法がとても有効です。完全に外気の侵入口を閉じることができるため、
テントの気密性を高めることができます。
雪中キャンプをする際はスカートの上に雪を被せましょう。
サーカスの防寒対策としておすすめできるカンガルースタイルもチェックしてみてください!
幕内で火器使用は自己責任で!ただし一酸化炭素警報機は必携すること!

テント内での火器使用は、テントメーカー各社が厳禁しています。理由は単純で、とても危険であるためです。
テントのようなある程度外気と遮断されている空間で火器を使用すると、火器に酸素不足が発生し、一酸化炭素が生まれます。
一酸化炭素は無色無臭の気体で、人間は気付くことができません。
毎年寒い季節のキャンプ場では、一酸化炭素中毒テント内で暖房器具を使ったことによって一酸化炭素中毒を起こし、
病院に運ばれる、最悪の場合死に至るケースが多発しています。
テント内で薪ストーブをはじめとする各種暖房器具を使用する場合は、必ず定期的に換気をおこない、テント内の空気の入れ替えを行いましょう。
それでもなお危険であることに変わりないため、一酸化炭素警報機を設置することをおすすめします。
一酸化炭素が人体に危険な濃度になる前に警報音で知らせてくれるため、無いよりは安心できます。
幕内への薪ストーブのインストールは、細心の注意を払うこと

寒い季節のキャンプは、とにかく気温との戦いです。
火や電気を使用しない暖房器具(ホッカイロやダウンジャケットなど)で暖を取ることも重要ですが、
ストーブを安全に使えば、これ以上ない心強い味方になってくれます。
ただし薪ストーブをテント内で使用するには、テント生地やファスナーへのダメージや、一酸化炭素の発生に
細心の注意を払う必要があります。絶対に安全な道具ではないという認識を持って、しっかり対策を行いましょう。
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