オピネルナイフには、「黒錆加工」と「オイル漬け(油漬け)」と呼ばれるカスタムがあります。 どちらもオピネルを購入したら最初に行う「儀式」のようなものと言われることが多いですが、今回はその手順を詳しく紹介していきます。
オイル漬けについては、必要かどうか意見が分かれるところです。 実際にやるとどうなるのか?不具合は出るのか? 気になったので、新品のオピネルナイフを使って実験してみました。 結果として問題は起こりませんでしたが、必ずやるべきものではなさそうです。 この点については、記事の後半で詳しく説明します。
一方、黒錆加工についてはメリットが大きく、特にデメリットを感じなかったため、おすすめできます。 失敗例と成功例をどちらも掲載しているので、少し長くなりますが参考にしていただければと思います。
オピネルの黒錆加工(カーボンブレード)
オピネルのカーボンブレードは丈夫で切れ味も良いですが、水に弱く錆びやすい特性があります。

この錆びやすさを抑える方法の一つが「黒錆加工」です。赤錆はブレードを侵食して劣化させますが、黒錆は表面に膜を作り、錆の進行を防ぎます。
黒錆加工の目的と効果
黒錆加工の主な目的は、カーボンブレードの錆びを防ぎ、メンテナンスの手間を減らす ことです。
- 錆びにくくなる:黒錆はブレードの表面を覆い、新たな赤錆の発生を防ぐ。
- メンテナンスが楽になる:頻繁に油を塗る必要が減り、多少の水気なら影響を受けにくい。
- 風合いが増す:黒錆が独特のヴィンテージ感を出し、使い込んだような味わいが出る。
黒錆加工はオピネルに限らず、炭素鋼ナイフ全般に使われる処理方法です。
今回、私は新品の カーボン #10 と、16年使い続けている カーボン #7 に黒錆加工を施しました。
なお、ステンレス製のオピネルには黒錆加工は不要(適用不可) なのでご注意ください。
黒錆加工の手順
準備するもの
必須アイテム
- カーボンブレードのオピネル
- パックの紅茶(黒錆液の原料)
- お酢(黒錆液の原料)
- 食器用洗剤またはパーツクリーナー(脂を落とす用)
- 空き缶・ペットボトル・コップなど(黒錆液を入れる容器)
あると便利なもの
- 耐水ペーパーまたは紙やすり(#400程度)(錆を落とす用)
- 砥石(刃のメンテナンス用)
オピネルの黒錆加工に分解は必要?

ナイフを分解すると作業がしやすくなり、ハンドルが液に浸かるのを防げます。
しかし、分解は手間がかかるため、必須ではありません。
今回は、カーボン #7 は分解し、カーボン #10 はそのまま 黒錆加工を行います。
どちらの方法でも加工可能なので、自分のやりやすい方法を選びましょう。
黒錆加工の下地処理

黒錆加工をする前に、ブレードの錆や汚れを落として下地を整えます。
- 軽い錆び → 耐水ペーパー(#400)で軽く研磨。
- 錆が酷い場合 → #220から順に細かい番手で仕上げる。
- 傷を抑えたい場合 → #400→#800の順に磨くと滑らかに仕上がる。
- 道具は自由 → 紙やすり、金タワシ、ワイヤーブラシ、砥石などでもOK。
新品の状態で加工するとスムーズですが、古いナイフも適切な下地処理で黒錆加工が可能です。
黒錆液の準備とナイフの浸漬

黒錆を発生させるための液体を作ります。今回は紅茶とお酢を使った方法を採用しました。
失敗例:紅茶の濃度が薄すぎた

まず、紅茶を濃く抽出する必要があります。
通常は鍋で煮出すのが一般的ですが、手元にあった紅茶メーカー(スペシャルT)を使いました。

しかし、思ったより紅茶の濃度が薄く、仕上がりに不安が残ります。
紅茶(約300ml)にお酢を目分量で50mlほど加え、黒錆液を作成。
臭いは強烈で、とても飲めるものではありません。

ここにカーボンオピネルを投入。
コップでも良いですが、黒錆が付着するため、使い捨てできる空き缶を使用しました。

結果:6時間浸けた後に確認すると、黒錆がムラになり、表面が焼けたような仕上がりに。

おそらく紅茶が薄すぎたため、反応が不十分だったと考えられます。

成功例:濃い紅茶を使用

失敗を踏まえ、今度はパックの紅茶を使い、しっかり煮出す方法を採用。
- 紅茶の抽出:鍋でパック2つを煮出し、約300mlの濃い紅茶を作成。
- お酢の追加:目分量で50mlほど加え、黒錆液を完成。
- ナイフの研磨:ブレードを#220→#400→#800の順で磨き、表面を整える。

この黒錆液にオピネルを再び投入。
以前とは異なり、泡の発生量が増え、黒錆がしっかり形成されているのがわかりました。

結果:1時間後に取り出すと、ムラのない黒錆が形成され、しっかりとブレード全体に定着。最初から紅茶を濃く作ればよかったと痛感しました。

また、すでに黒錆加工済みのカーボン#7も試しに浸けましたが、大きな変化はなし。長年使用して自然に黒錆化したものは、さらに安定しているようです。

新品のカーボン#10は表面に黒錆のコーティングが形成されたものの、まだ剥がれやすい状態。
今後、定期的な黒錆加工が必要になるかもしれません。
黒錆加工のデメリット
黒錆加工には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットもあります。
- メンテナンスの必要性:黒錆は赤錆の発生を防ぐものの、完全な防錆ではありません。使用環境によっては、定期的に黒錆加工を施す必要があります。
- 錆び防止効果の限界:黒錆加工はナイフ表面の保護にはなるものの、完全に錆びを防ぐわけではありません。特に、湿気の多い環境では油を塗るなどの追加メンテナンスが必要です。
- 見た目の変化:黒錆加工を施すことで、ナイフの見た目が大きく変わります。ヴィンテージ感が増す一方で、好みが分かれる点でもあります。
- 食材への影響:黒錆は比較的安定していますが、最初のうちは多少の金属臭が出ることがあります。食材に触れる部分は、特にしっかりと洗浄する必要があります。
- 一度黒錆加工すると戻せない:黒錆加工を施すと、元のシルバーの状態には戻せません。研磨すれば表面を削れますが、完全に元通りにするのは難しくなります。
オピネルのオイル漬けの手順と方法

オピネルのハンドルを油に浸けてコーティングすることで、刃の出し入れが渋くなるのを防ぐ「オイル漬け」を試してみました。
オイル漬けの目的
新品のオピネルは水分を吸うとハンドルが膨張し、刃の出し入れが固くなることがあります。使い込めば改善されますが、オイル漬けによってその問題を防ぐことができます。
実際にやってみた

今回は黒錆加工を終えたカーボン#10をモデルに実験。オイルにはアマニ油(乾性油)を使用しました。

- 準備:ジップロックにアマニ油を入れ、オピネルをブレードごと漬ける。
- 漬け込み時間:24時間が推奨されるが、今回は6時間に短縮。
- 乾燥:取り出した後、オイルを拭き取り一晩放置。
ついでに、カーボン#7にもアマニ油を薄く塗り、同じく乾燥。

結果とデメリット
- カーボン#10:ハンドルにツヤが出て質感が向上。刃の出し入れもスムーズに。
- カーボン#7:若干ツヤが戻った程度で、大きな変化はなし。
今のところ問題はなく快適に使えています。
ただし、オイル漬けをしても完全防水にはならないため、水濡れには注意が必要。
また、油分が残るとベタつく可能性もあります。
オイル漬けには賛否があり、「ハンドルが痛む可能性がある」との指摘も。
個人的には必須ではないが、やっても大きな問題はないという結論です。
オピネルのオイル漬けを検討している方は、メリット・デメリットを理解した上で試してみると良いでしょう。
まとめ
オピネルのカーボンブレードは、切れ味が良く扱いやすい反面、錆びやすいというデメリットがあります。これを防ぐ方法として黒錆加工とオイル漬けがあり、それぞれにメリットと注意点があります。
黒錆加工のポイント
- 錆び防止の効果があり、メンテナンスの手間を減らせる。
- 仕上がりの均一さには紅茶の濃さが重要。
- 黒錆加工後も定期的なメンテナンスが必要。
オイル漬けのポイント
- 刃の出し入れの渋さを軽減し、ハンドルの保護効果もある。
- 完全防水にはならないため、水濡れには注意が必要。
- 使用するオイルは乾性油(アマニ油など)が適している。
どちらのカスタムも、オピネルの使い勝手を向上させるための有効な手段です。ただし、必ずしも必要な処理ではないため、自分の使用環境に合わせて選択するのが良いでしょう。
黒錆加工は特におすすめですが、オイル漬けは慎重に考えて試してみるのがベター。
オピネルのカーボンブレードを長く愛用するために、適切なメンテナンスを取り入れてみてください。
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